「人生のスタイルを実現するための、いくつかの手段。農業は、その中のひとつ」久保寺 智さん(前編)

その考えはいつ生まれたものですか

久保寺 もともと、依存物を少なくして生きていきたいという思いがありました。いつからかはよくわかりません(笑)。僕は自然の中で遊ぶことがとても好きです。山に入っても普通に登山をするというよりも、少ない荷物で山中を長距離走り抜けたり、ロープを背負って岩壁を登り降りするような山旅の方が好みだったりします。

農業旅のときも、茨城や千葉には自転車で行きました。自分の身体と少しの道具でなにかを完結できる楽しみに快楽に似たような価値観を覚えるのです。依存物をなるべく少なくし、その上で勝負する。自分のエネルギーを信じて進んでいく感覚。これはなにものにも代えがたい価値があります。

そのような価値観は今の自分の農業のスタイルに通じているとも思っています。自分自身が突き詰めたいことと、リスクのバランスをとり、自分の中から湧き出るエネルギーでどこまで進むことができるのかを追求していきたいと思っています。自分にとっての今の農業は冒険旅のようなものなのかもしれませんね。

追い求めている人生のスタイルがあって、農業はその中のひとつ、なんですね

久保寺 そうですね。アウトドアもスポーツというよりは、自然と自分の身体や心のつながり、という感覚が好きです。より原始的に、よりシンプル生きていくことを追求して、その先にある楽しみを求めているのかもしれません。哲学や思想ではなく、己の中の真理を求めているという感じでしょうか。

そうすると、いまの農業スタイルに行きついたのは必然かもしれません

久保寺 人生のテーマと矛盾しないスタイルで農業ができる可能性を感じることができたのは、やはり農業修行旅での様々なご縁があってこそだと思います。

いろいろな農業のスタイルを見てきましたが、現在の僕が理想としているようなスタイルにがっちりハマる農業を生業としている方とのご縁はいただくことができませんでした。(いらっしゃるのだとは思いますが、僕が旅の中で出会うことができなかったということです)

しかし、可能性を感じることはできた。後は、どうすれば自分の理想を具体化できるのか。考えてやってきた結果、いまの農業スタイルに辿り着きました。丸5年やってきて、今の所生活もできていますし、生き方としての価値観を高めることを両立できている実感を持てるようになりました。

「価値観」、「スタイル」、「生き方」。言葉がインタビュー中にたくさん出てきた言葉です。自分自身の考え、大事にしていることとのバランスをとりながら、いかにやりたいことを実践するか。同じようなテーマを持って生活している人も多いと思います。そうした人たちが久保寺さんのところにたどり着くのはとても自然なことなのかもしれません。また、「ご縁」という言葉もたくさん聞きました。その大切さを知っているからこそ、「ご縁」が広がっていくのだと感じました。
取材:2018年02月19日 堀尾タモツ



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