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「ローカルの活動をグローバルな活動につなげていきたい」今林 久則さん

藤沢・茅ヶ崎にて有機栽培野菜を育てている、「イマハ菜園」。園主の今林 久則(いまはやし ひさのり)さんにお話をお聞きしました。
イマハ菜園のホームページ

農村で暮らす人と都市で生活する人の架け橋に

生ごみから堆肥をつくる活動をはじめたと聞きました

今林 ローカルフードサイクリングという、食を通じて地域循環をさせる活動です。家庭で出る生ごみを使い、ダンボールの中で堆肥をつくる。できた堆肥を回収して、生ごみ堆肥用の圃場に集める。その堆肥を使って野菜をつくり、その野菜を参加者に還元します。自分が住んでいるマンションの入居者の方たちと一緒に始めました。

ダンボールコンポストの堆肥

ローカルフードサイクリング活動は福岡にある循環生活研究所という団体が2015年から実施しています。この活動を地元の人と一緒にやりたいと思いました。同じマンションで暮らす人に説明会を開き、主旨に賛同してくれた人とスタートしました。

堆肥については、茅ヶ崎牛の牛糞を買ったりしていますが、トレーサビリティの観点からもどこから来た堆肥なのかが明確な方がいいですよね。地域の中で循環することで、持続性も高まる。6家庭からスタートしましたが、徐々に広がっていくといなと思っています。

これ以外にも、ご家庭の生ごみを堆肥として使って、各自で野菜を栽培する活動も考えています。畑で参加者の区画を割り当てて、自分の手で野菜つくりが体験できる。自分の手で育て、新た発見を得る。これが、生産者と消費者の理解が深まるきっかけになればと思います。

他にも地域の人と取り組んでいることはありますか

今林 今年で3年目になりますが、参加者全員で稲を育てる「田んぼの会」ですね。収穫したお米も全員で均等分配します。自然環境や生物の多様性、田んぼの貯水機能など、稲を育てる過程で学ぶことができる。この会も同じマンションで暮らす人に説明会を開くところから始めました。

一年目は田植えと稲刈りだけのイベントとして、受けとられた感じがありました。稲を育てるためには、草取りも必要な作業ですがそこまでは手入れが進まなかった。

いまでは、来年の計画や草取りのシフトを決める作業など、参加者が自主的に行動してくれるようになりました。地元のお祭りに稲を奉納したり、住民間だけではなく周辺地域とつながりも生まれてきました。

マンション住まいの新規就農者として都市で働く人と農業をつなぐ役割は何か、ということを常に考えています。農村で暮らす人と都市で生活する人の架け橋になるというか。自分にしかできないことだと思っています。

地域の人たちと、楽しみながら活動を展開していく

農業を始める前のお仕事は?

今林 IT関係の仕事をしていました。規模の大きなプロジェクトに多く携わっていた。社会的に望まれていること、自分自身のモチベーション、会社からの評価などが一致していて、とてもやりがいがあった。

しかし、いつしかそこがかみ合わなくなってきたんですね。そこで、世の中の役に立つこと、自分自身が楽しみながら納得感を持ってできることを探すようになりました。

いま振り返ってみると、祖父や父も漁業に携わっていました。実家のある地域は、半農半漁で生計を立てている人が多かった。みんなずっと仕事をしていたし、身体も健康そのものという感じで。人間的で素晴らしいという思いでみていたのが、農業を始めたことにつながっているのかもしれません。

「IT関連と農業は180度違うよね」と言われることが多いですが、ものづくり、プログラミング、仕組みやルールを作って運用していく過程など、ITと農業で共通している部分は多い。野菜が元気に育ったり、システムが稼働したときに感じる喜びは同じですよね。

家庭菜園が農業との出会いなんですよね

今林 食糧自給率が話題になった時代に、家の中の自給率から変えてみようと家庭菜園を始めたんです。雑誌を読みながら独学で7年くらい。プランターから庭、市民菜園へと栽培の範囲を広げていきました。

茅ヶ崎に引っ越してきてからも農地を借りて栽培を続けていた。農業を始めようと思って、引っ越してきたわけではないんです。農地を借りたのはあくまでも、家庭菜園の延長だったんです。

そこから本格的に農業をはじめようと思い、縁のあった相原農場さんに研修にいきました。就農計画を提出したり、研修期間にいろいろ準備をして職業として利用する畑を借りました。不安は、あまりなかったです。むしろ、これでやっていこうとうワクワク感が強かった。

当初から慣行栽培での農業は考えてなかった。最初にお借りした畑が化成肥料を使っていない畑で、研修先の相原農場さんも有機栽培なので、そのスタイルで始めようと。

肥料をあまり与えないとか

今林 無農薬・無化学肥料が基本です。そして有機肥料もできるだけ使わないように心がけています。有機肥料をいれなくても元気な野菜はつくれます。例えば、菌根菌という野菜と共生する菌がいます。土の中から野菜が必要とする分だけ肥料を供給してくれる。

肥料分をたっぷりと与えるとこの菌根菌が出なくなる。野菜や畑の土の状態をよくみながら、肥料のバランスを考えることが大事です。

たくさんの種類の野菜を栽培されていますね

今林 70品目くらい、品種にしたら3倍以上でしょうか。(笑)相当多くの野菜を育てています。作りたいと思う野菜を見つけたらチャレンジしてしまう。お客様からのニーズがあるからつくる、ではないんです。

以前、アーティチョークも栽培しましたが買う人がいなかった(笑)。おしゃれな野菜ですね、と言ってくれる人はいるけど、買わない(笑)。野菜の情報はネットや周囲の生産者、雑誌や本などで収集しています。

栽培をはじめるときには、採算は考えていない。でも、持続可能な農業にしないといけないので、売れる野菜、自分が作りたい野菜のバランスをきちんと考えていくことが課題ですね(笑)。

野菜の種類以外でのこだわりはありますか

今林 野菜の収穫期は3つに分かれています。「はしり」、「さかり」、「なごり」。どのタイミングでもそれぞれの味わいがありますが、収穫期中の旬である「さかり」の野菜を食べていただきたいですね。

寒い時期から保温など温度調整をして育てるようなことはなるべく避けたいですね。野菜が無理なく、自然に大きく育つ時季に適切な野菜を育てることを大切にしていきたい。

これから取り組んでいきたいことはありますか

今林 国連サミットで採択された、国際社会共通の目標SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」。いきなり地球全体の目標とかになると自分とは関係のないことのようにとらえてしまいがちです。

しかし、こうした考えに自分たちのローカルな活動をコミットして、参加者を巻き込んでいく役割を担っていきたい。ローカルフードサイクリングにて実践したいと思っています。

参加者の意思がグローバルな活動につながっていく。そういう意識を持てるようにする。自分たちの活動が世界にもつながっていき、世の中の役に立っている。こうした意識と活動が浸透していくと地域の人を含めた力はさらに大きくなっていく。そこには楽しみながら活動することが重要なんです。楽しくないと持続可能にならない。

こうした考えはいつからですか

今林 農業研修中から考えていました。農業者としての自分の立ち位置にもつながる。やりたいことの主旨を理解してもらい、納得感をもって取り組み、実行する。周囲の人を巻き込んで活動を展開することは、会社員での経験が活きています。

あとは、自家採種にも本格的に取り組んでいきたい。固定種の野菜の種をとって、その種で野菜を作っていく。これも地域循環の活動になります。いまでもやってはいますが、まだまだ種の種類が少ないので。「地域内での循環」は大きなテーマのひとつですね。

同じマンションで暮らす方と一緒にいろいろな取り組みをされている今林さん。野菜をつくって、買ってもらってという関係ではなく、ひとつのチームとして活動をされている印象を受けました。こういう考えを持つ生産者が身近にいる地域はとても幸せだと思います。
取材:2018年07月17日 堀尾タモツ

イマハ菜園
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