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「きよ・マルシェは、新しい農業のカタチをつくる可能性を秘めている 」三好 崇一郎さん

きよ・マルシェの運営に携わっている、三好種苗株式会社 取締役・専務の三好 崇一郎さん。きよ・マルシェがはじまった理由、運営のノウハウについてお話をお聞きしました。

きよ・マルシェのはじまり

きよ・マルシェを始めたきっかけを教えてください

三好 三好種苗の本店は中山にあります。事業が大きくなるにつれ、搬入や倉庫の問題が出てきました。その時に、きよ・マルシェの会長である平本喜誉作(ひらもと きよさく)さんに声をかけていただいたのです。

現在、きよ・マルシェがあるこの敷地に羽沢店を設立しました。敷地が広いので倉庫だけだともったいなぁと。そこで資材置き場と事務作業ができるスペースを作りました。

それでも、まだスペースがあるので何かできないかと農家さんに声をかけたのがはじまりです。8軒の農家さんからはじまって、現在は15軒の農家さんが参加しています。

最初から8軒の農家さんが参加されていたんですね

三好 この地区で羽沢のキャベツを共同で出荷していたグループがあったのです。また、スーパーに出荷しているグループもあり、共同で取り組むベースができていました。知った者同士で仲もよかったから、直売もやってみようかという流れができたと思う。

最初は売り場が無かったから軽トラックの荷台で野菜を売っていました。当然レジも無く、売上げ管理など数字があわないこともあって大変でした。そんな状態なので農家さんも半日は直売所に立つことに。当初はそれほど売上げもなかったので、労力、時間、売上のバランスが成り立っていかなかった。

農家さん一家総出で協力しないとても実現はできなかったと思います。そのくらい農家さんの時間を栽培以外のことに使うのは大変なことなのです。

きよ・マルシェの運営は改善のつみかさね

その状況を変えるために何からはじめたのですか?

三好 まず、農家さんの負担を減らすことからはじめました。できるだけ農家さんに負担がかからないような体制をどう構築するか、運営を試行錯誤してきました。もちろん、農家さんが店頭に立つことで消費者の方と直接やりとりができるメリットも大事にしたい。

そこで、参加している農家さん全員が毎回売り場にいるのではなく、当番制にしました。野菜は配送してもらいますが、その他の作業をできるだけ減らす工夫をしました。

バーコード、レジを導入して商品・売上げ管理の作業も軽減しました。これは、作業負担を軽くするだけでなく、商品・売上げデータを農家自身が一目で数値を把握できるようになったメリットもあります。

数値の見える化ですね

三好 どの野菜がどのくらい売れたのか。月ごと、年間での数値をもとに分析ができます。それをもとに、これからなにをしていくか、ということを議論する。根拠となる数値があることが重要なのです。見える化、共有、議論する場が必要。そういう試行錯誤の中、農家さんにとって「きよ・マルシェ」の位置づけも変わってきたと思う。当初はキャベツが10個しか売れないときもありましたから(笑)。

努力すればその効果が数値に反映されてくる。これが農家さんのモチベーションにつながる。そうすると自身の成功体験をもとに、別の農家さんに声をかけて、参加数が増えてくるという展開につながる。参加農家さんの年齢は30代、40代と同世代が多くそれぞれが個人経営の社長みたいなものです。一人ひとりで頑張るという形になりがち。しかし、きよ・マルシェのような場があると、いい意味での刺激を受ける。栽培している品種の情報交換なども自然に生まれてきます。

その中で、三好さんの主な役割を教えてください

三好 私たちが担当している業務は経理を含む事務作業。裏方として陰できよ・マルシェをサポートしている立場です。現在はパートさんを一人雇用しています。売上げの中からでパート費用も捻出しているので、どのくらいの売上げがあれば、雇用ができて黒字になるかという経営計画も立てています。それをもとにメンバーで話し合って実行にうつす、という感じですね。

15軒だから大変なこともありますよね?

三好 仲が良いとはいえ、生産者同士だと遠慮する場面も当然あります。そういうときは、自然と私がリードする役割になりますね。試行錯誤の過程では、メンバーにとっても耳の痛いことをいわなくてはならないことも。そういう役割が必要な場面は必ず発生するので、遠慮ばかりではうまくいかないのです。みんなが自由に意見を言える環境・雰囲気をどうやって作るのか、ということが大切です。

やはり、コミュニケーションが基本。だからこのチームは、話し合いをたくさんやってきました。直売が終わった後や打ち合わせの場を設けて、いろいろなタイミングで顔を見ながらは話をすることに、かなりの時間を費やしてきました。今日も夜にバーベキューがあるんです(笑)。

そうすることで、これから先どうしていくかという意識もあってくる?

三好 どういう方向性で進んでいくかということは、明文化することも大事です。文字にしてみんなで共有して意見を交わす。この3年間の経験の中でいろいろ学んできました(笑)。最初からすべてがうまくいくわけもないので、あれこれチャレンジしながら、継続していくことが大事なのだと思います。

もちろん、商品である野菜を作る農家さんが主役です。しかし、経理、事務、運営方針、情報共有などの運営にかかわる業務を担当する人間がいないときよ・マルシェが成立しないのも事実。この役割分担を明確にしてきたからこそ、きよ・マルシェが続いてきたのだと思います。

大事なのは、同じ方向を向いてビジョンを共有すること

これからチャレンジしていきたいことは?

三好 最終的には、きよ・マルシェで飲食ができるようにしたい。朝採れた野菜をその日に販売、加工する、調理して出して、一番おいしい状態でお客様に食べていただきたい。横浜だけでなく、神奈川県全体でみると、さらに可能性が広がります。

食材の持つ本来の味を子どもたちにも伝えていきたい。野菜が苦手な子どもでも、本当においしい野菜なら食べることができた、という話も聞きます。

参加している農家さんがそれぞれやりたいことを持っている。いつか実現したい同じ夢があるから、継続できたのかもしれませんね。あまり駆け足でもよくないし、ひとつひとつクリアしていく。これからも、ひとりが無理をしている組織ではなくみんなでカバーしあっていくチームでありたいですね。

個での活動にはどうしても限界があります。こういう組織だからできることにこれからもチャレンジしていきたい。今のきよ・マルシェは、新しい農家のあり方にもつながっていく可能性を秘めていると思います。

きよ・マルシェに行くとその賑わいぶりに驚きます。開店前から並んでいるお客様も多くいらっしゃいます。たくさんの種類の野菜が豊富に並べられているのは15軒の農家さんが参加されているからです。しかし、これだけ大規模のマルシェを運営するためには、管理運営体制がとても重要だと思います。その中心人物である三好さんのお話はとても興味深いものでした。まさに、ひとつの会社を経営するのと同じくらいの苦労があったのだと思います。こらから先の展開がとても楽しみなきよ・マルシェでした。
取材:2017年1月21日 堀尾タモツ

きよ・マルシェ:横浜市神奈川区羽沢町1681 毎週土曜日 14:00-17:00
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きよ・マルシェに参加している小澤農園さんの取材記事は、こちらからご覧ください

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